
昨今さまざまなシーンでよく耳にする「D&I(ダイバーシティ&インクルージョン)」。
東京オリンピックでも「多様性と調和」が基本コンセプトとして掲げられていたように、D&Iの視点や取り組みは急激に浸透しています。
このように、働き方や生き方、価値観など様々なものが多様化し、そしてそれを受け入れる文化がグローバルで進んでいます。
企業のマネジメント現場でも、このような多様な「働き方」や「メンバーの個性」を活かすための取り組みが増えてきており、ダイバーシティマネジメント研修に注力し始めている企業が多くなってきています。
この記事では、多様性を持ったチームが相乗的につよみを発揮し成果を出していく「コラボレーションチーム」のつくり方についてご紹介!
ストレングスファインダーを活用したAIアプローチ(※)における「4Dサイクル」での具体的なマネジメント手法について、D&Iのコンサルティングサービスを提供しているWisH株式会社の代表 清水美ゆきさんとともに解説していきます。
※AIアプローチとは:「AI」は、アプリシエイティブ・インクワイアリー(Appreciative Inquiry)の略。ポジティブな問いや探求によって、個人と組織における強みや真価、成功要因を発見し、認め、それらの価値の可能性を最大限に活かした最も成果が上がる有効なしくみを生み出すためのプロセスを指す、米国で開発された人材開発や組織活性化のアプローチの一つ。(参考:日本の人事部)https://jinjibu.jp/keyword/detl/731/
この記事の目次
目指したいのは、個々人が能力を発揮できる「インクルーシブ」なチーム
そもそもダイバーシティマネジメントとは、多様な人材を活かし、その能力を最大限発揮できる機会を提供することでイノベーションを生み出し、価値創造につなげている経営のことを言います。

それぞれの人がもつ潜在的な能力や特性を、従来のスタイルや枠組みのなかで育成しようとしても、そもそもが個々の能力を発揮できない、もしくは発揮する機会すらも設けられていないということがあります。
こういった、「持っているけど使っていない」という潜在的な能力を引き出し、活かしていくというのもD&Iの取り組みのひとつになりますね!
「逃避」や「許容」、「探求」「敬意」といった様々な心理フェーズを経て、多様な人たちがお互いの価値を認め合い、高めながらイノベーションを創造していくことがD&I推進のステージ。
ですが、ここを行ったり来たりしていて上手く進まないケースが多く存在しているのがマネジメント現場での実情でもあります。




では、それをどのようにして進めていくといいのでしょうか。そこには、インクルーシブな組織であること、つまり「インクルージョン」というキーワードが重要となってきます。
お互いが尊重されている事はもちろんですが、同じ目標に向けてきちんと協働されているという事が大切です。
つまり、単に組織を構成するメンバーの多様性を高めるだけではなく、その多様性がお互いに尊重され、そして活かされる「インクルーシブな組織づくり」を目指していく必要があります。




チームのD&Iの状態が高く、そして自分の考えを安心して発信できる「心理的安全性」が高い状態になって初めて、高いパフォーマンスが発揮されていきます。
共通の未来をチームで目指すことが出来ていると、それはチーム自体が「コラボレーション状態」であると言えますね。
この状態を作るためにマネージャー層がやってくべきなのは、コミュニケーションや対話。リモートワークが増えた昨今、さらにこの重要性は増してきています。
そうした「対話」を通してどのようにAIアプローチでのD&Iを推進し、「コラボレーションマネジメント」を実現していくとよいのでしょうか。
コラボレーションを生み出すチームに必要な「要素」と「共通言語」
組織には様々なタイプの人がいます。そのぶん、仕事に対する考え方や進め方も様々。
それぞれの特性を理解し、つよみを引き出して個々人に応じた役割分担や指導をしていくことが、現代のマネジメントには求められます。




この図にもあるように人にはそれぞれ個性があり、それをお互いに理解をしていくことの必要性は誰しも頭では理解しています。しかしながら、この理解を深めていくための「言語」を知らないことが多い、とスパークルチーム代表 楠麻衣香(まいP)は感じています。










コラボレーションが生まれるチーム文化を創る共通言語として「ストレングスファインダー」を活用していくことで、つよみに着目したチーム作りをしていくことができます。
では、コラボレーションを生むチームに必要な要素は一体何なのでしょうか?
コラボレーションチームは、つよみがお互いに相互依存している状態であるチームのことで、前提としては前述した通り心理的安全性が担保されているということが重要です。










心理的安全性を持つためにも、メンバー全員がパーパスやミッションをきちんと腹落ちしていること、自分のチームがどこに向かっているのかを共通認識できているってことが大切。そこにマネージャーが一人一人に対して役割・期待を伝えていくことで、個人の目標が定まっていきます。
そしてその目標に対してマネージャーは日々指導や支援をしていきますが、それだけではなくメンバーからもマネージャーに対して適宜サポートの依頼をしている、といったお互いの「つよみの貸し借り」がうまく出来ている状態こそ「コラボレーションチーム」ですね。
このような心理的安全性が担保できている状態がベースにあって、そのうえで一人一人が自律をしていて(もしくは専門領域を持っている)、そしてお互いの役割が理解できている。
さらにこれらの継続のためのシステムがあり、マネージャー自身もセルフメンテナンスが出来ている。この状態まで持って来ることができれば、コラボレーションチームとして大きく近づいていきます。










力がない人たちが集まっても共倒れしてしまいます。
ですので、一人一人が自律していて自分のつよみや専門性を意図をもって発揮できていないとコラボレーションは生まれません。


4Dサイクルにおける具体的なストレングスファインダー活用法
ではコラボレーションチームをつくっていく具体的な方法として、ここからは組織開発の手法であるAIアプローチを基にご紹介していきます。
AIアプローチは以下のような「4Dサイクル」と呼ばれるプログラムサイクルに基づいており、これによって個人の潜在能力を引き出していくという、ポジティブアプローチ手法のひとつです。












この4Dサイクルで特に大事なのは、「②Dream」は(中途加入含めた)今いるメンバー全員が「私はこのチームでこの力を発揮します!」というビジョンを言葉にすることができる状態、ということです。
そしてそのビジョンを戦略に落として役割を「③Design」していくこと。これはただのアサインだけではなく、それぞれの関係性においてどんな役割をどうデザインしていくかが明確である状態を言います。
では具体的に、「4D」のそれぞれのフェーズにおいてどのようにストレングスファインダーを掛け合わせていくといいのでしょうか。
ここでは「①Discover」「③Design」「④Destiny/Delivery」についてご紹介します。
①Discover:一人一人の強みを知る
この「Discover」にはステップが二つあります。
まずはマネージャーが1対1でメンバーと対話をして理解をしていくこと。
その時に、共通言語として活躍するのがストレングスファインダーです。
対話の一部を例としてご紹介します。







これまですごい良い仕事したな、というときはどんな時?







そうですね、一人でやるよりはチームで結果出したなっていうときですね。







チームで結果を出すことが大事なんですね。具体的には?







普段は上司と一緒に資料を準備して提案するんですけど、去年ある顧客で拡大案件になって自社の商品だけでは足りないと思ったので、大学時代のシステムに詳しい同級生に相談したんですよね。







へぇ、社外の人に相談したんですね。







はい、個人的な人脈なので上司に怒られるかなと思ったんですけど「ぜひ提案しよう!」って言ってくれて。そのあと事務のスタッフさんや後輩の力を借りて、初めての大型受注になったんです。







すごい、とてもやりがいがあった様子が伝わってきますね。Bさんはその時、今思えばどのつよみを使っていたと思う?







うーん、やっぱり「社交性」ですかね。結構人脈は広いって昔から言われるんですよ。







確かに社交性はとても活かせていましたね。新しい人とつながって仕事に成果が出るのはとても楽しいんじゃないんですか?







はい、すごい楽しいです!!!!







他にも「戦略性」や「着想」も使っていそうですね。自社の商品にないからできない、というのではなく、自分で考えて作り出す方が快適だったりしませんか?







確かに…。それで昔の上司に「できないから諦めろ」って言われたときに激怒したことがありました(苦笑)










このようにストレングスファインダーの資質を軸として対話を繰り返していると、Bさんのつよみが理解していくことができます!
そして次のステップは、1対1ではなくチームメンバー同士がお互いのつよみを知っていくことです。
ストレングスファインダーの資質とセットで、自分の知識や経歴、趣味、価値観、背景などもお互いにシェアをしていくことがポイント。
そしてマネージャーは、対話の中では出しきれない意外な側面をサポートしていくことが役割です。
そうすることで、ストレングスファインダーという共通言語を通じて、短時間で相手の価値観の部分まで知ることができ、深く分かりあえるようになっていきます。










これによって「Know Who」の状態、つまり誰に何を聞いたらいいのかが分かるようになり、「You are Awesome!(あなたって本当すごいね!)」というような承認の文化が生まれていくようになります。


③Design:役割をデザインする
「Design」ではビジョンを戦略に落とし、それぞれのメンバーの役割をデザインしていきます。そのためにも、お互いのつよみがチームのビジョン実現にどのように貢献していくかを理解していく必要があります。
オススメは、ワークショップ形式でお互いのつよみをシェアし、そこで自分のつよみがチームにどう貢献できるかを宣言してもらうということ。
そして、逆にサポートしてもらいたいことも一緒に宣言していくとよりよいシェアとなります。
そうしていくなかで、それぞれの役割が明確になり、うまくデザインしていけるようになります。










ワークショップとして「Gift &Support」、つまり「貢献」と「ヘルプ」を宣言していきましょう!
頼ってもらえるという事はすごく嬉しいことですし、頼られることはその人にとって全く苦じゃないんです。


④Destiny/Delivery:続けていく
「Delivery」には大きく分けて以下の3つの観点が大事で、これらを続けていきながらぐるぐると回していくことが求められます。
①個人の自律を促す
②チームとしての関係性をつくる
③戦術を評価する
特に「①個人の自律を促す」ためには、メンバー自らが経験学習サイクルを回せる状態であることが大切。
そのポイントとしては、これまでの「経験」を振り返って「内省」し、「概念化」という勝ちパターンやセオリーを持論化していくことです。
しかしながらこれをメンバー自身が自分ひとりでやっていくには非常に難しいことです。
よって、最初の数か月~半年は、マネージャーがこの「自律」を1on1などを通じて丁寧に促進していくことがとても重要です。
たとえば以下の図の例では、「上手くいかなかった」という話から始まりますが、資質をうまく使えてたことを思い出させ、その時の感覚を上手く使いませんか?という対話になっています。














このようにして対話をしていくと、メンバーはポジティブアプローチで自分の物の見方(認知)が分かるようになります。
そうすると最後には、「もうちょっとチャレンジできるかも?」という思いにつなげてあげることができ、メンバー自らが動き始める動機付けができてくるようになります。このような自律したメンバーが増えていくと、その相乗効果としてチームとしての関係性は必然的に良くなっていきますね!
つよみに着目したマネジメントで「コラボレーションチーム」をつくりだす
ここまでで、ひとりひとりのつよみを発揮するチームをつくるためにまずマネージャーは何をすればいいのか、4Dサイクルをベースに簡単ではありますがご紹介してきました。
このように、多様な個性をもつメンバーそれぞれのつよみを理解し、そこを相互に「Gift」していくような文化を創っていくことで「コラボレーションチーム」は生まれていきます。
そこを実現していくためにも、共通言語となるストレングスファインダーの活用は非常に有効で、組織における「対話の質」をぐんと高めていくことができます。
このようなつよみを活かしたコラボレーションチームを創り出すサポートを、スパークルチームはWisHと共同で提供しています。
以下のような課題やお悩みのある方は、ぜひお気軽にご相談ください。
・ダイバーシティマネジメントをもっと理解し自社に活かしたい
・1on1やチームミーティング等におけるメンバーとの対話の質をもっと高めたい
・メンバーの自分らしさをもっと引き出したい
・ストレングスファインダーをチームで全員受けたものの、受けっぱなしになってしまっている










今の時代、「指令・命令型」の上司から、対話を通してマネジメントしていく「コーチ型」の上司であることが求められています。
ストレングスファインダーを活用した対話でAIアプローチが出来る「コラボレーションマネージャー」になっていきましょう!
スパークルチームはこれからも、ひとりひとりが輝き成果を発揮するチームづくりをサポートしてまいります!