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スペシャル対談

個人のレジリエンスを高め、リスキリングを実現するために、企業や人事は何をすべきか?

変化の激しい時代の中で、レジリエンスやリスキリングの重要性に注目が集まっています。予測できない変化に対応するしなやかさ、失敗にもめげずに回復する力、そして自身が置かれた状況に応じて新たなスキルを身に付ける姿勢は、個人にとっても企業にとっても不可欠なことです。

しかしながら、レジリエンスを高めるために企業は社員に何ができるのか、リスキリングを促してイノベーティブな風土をつくるにはどうすればいいのか、悩んでいる企業や人事は多いのではないでしょうか。

そこで今回、『ストレングスファインダー®』を活用した人材組織開発コンサルティングや個人向けキャリア開発支援サービスを提供する、スパークルチーム合同会社 代表の楠が、2,000人近い人事コミュニティ「人事ごった煮会」の発起人であり、ご自身も人事から経営企画へのキャリアチェンジをされているオイシックス・ラ・大地株式会社 経営企画本部 グループ経営推進室 三浦 孝文 氏に、ご自身の経験を交えながら、「レジリエンス※を高めリスキリングにつなげるために」をテーマに、お話を伺いました。

レジリエンスとは

レジリエンスに明確な定義はないとされていますが、一般的な言葉として「回復力」「復元力」あるいは「弾力性」という言葉に訳されます。元々は物理学や生態学の専門用語として知られ、近年では心理学の分野で耳にする機会も増えています。

プロフィール

オイシックス・ラ・大地株式会社 経営企画本部 グループ経営推進室 三浦 孝文 氏

2010年、新卒でインターネット広告ベンチャーの株式会社D2Cに入社。新卒で人事部に配属となり、中途採用、新卒採用を経験後、メディア事業部に異動。その後、クックパッド株式会社に転職し、採用全般、そして制度企画に携わる。

2017年、当時のオイシックスに採用責任者として入社。大地を守る会、らでぃっしゅぼーやとの経営統合を人事として経験。

2019年10月より、人事企画室の室長として、採用全般や入社後のオンボーディング、社員の働きがいに向けた制度企画などに携った後、2021年4月から経営企画部の部長として経営会議や合宿などの事務局や全社戦略の社内浸透に従事。

2022年5月からはグループ経営推進室で、次の事業成長に向けたマネジメントシステムづくりに従事。兼業で株式会社Glocal Kの組織経営アドバイザリーを務める。

レジリエンスの高い人とは、どんな特徴があるか?

三浦さんは人事コミュニティの立ち上げをしたり、ご自身も転職や異動で色々なご経験をされていらっしゃいますが、普段からレジリエンスを意識していますか?

三浦氏あまり意識したことはないです。でも、変化することに慣れているというか、タフな環境に放り込まれることが多いほうだと思います。落ちているボールを拾うタイプというか。

レジリエンスが高い方って、あまり意識されていない方が多いですよね。レジリエンスは後天的に高められるという研究結果もありますが、どこかで揉まれた経験や潰れかけたけど乗り越えた経験がある方が多いと思います。

三浦氏何度か気持ち的に潰れかけたり、「やばいな」と思ったことはあります。レジリエンスというテーマでいうと、1回目の転職をした時です。人事として転職をしたのですが、同じ人事といっても会社によって求められることや、仕事の進め方って違うじゃないですか。そこで自分の中で壁にぶつかって、最初は全然仕事がうまく進められませんでした。でも、上司や同僚に色々と指摘をもらって、自分に向き合わざるを得ない状況になって、初めてアンラーニング出来た部分があって、結果として変わっていったんです。

自分ではコントロールできない環境の変化とか、予想してなかった状況に直面した時に、誰かに相談したり、内省して克服したり、そういう経験を繰り返していくなかで、レジリエンスが培われるというのはありますよね。

三浦氏周囲でレジリエンスが高い人をみても、やっぱり起きた事実に逃げずに自分と向き合っている気がします。めちゃくちゃ大変ですけど、本気で向き合うことで自分のキャパシティも分かります。それが見えて初めて、周囲の人に助けてもらったりできますから、本当に重要だと思うんです。

自分と向き合って自分を知ることは、レジリエンスを高める上で大きなポイントですね。私も自らの経験を振り返ってみると、自分の資質を知って、自分の扱い方が分かってから「もう何があっても大丈夫」って思えるようになりました。

三浦氏どんなことがあったんですか?

私、良くも悪くも声が大きいんですよ。それって私がハッピーな感情でいる時は、周囲にもプラスの影響をたくさん与えられますが、少しでも後ろ向きな発言をしたら、チーム全体にネガティブ感情が伝播してしまうんです。私自身、そこにまったく無自覚だったので、なんだか周囲とうまくいかなかったり、会社に入ってからも経営側から扱いにくいと思われたりしていました。

でも、ある時それが全部「声が大きい」という私の資質からくるものだと分かった瞬間があったんです。強みと弱みは表裏一体だとよくいうけど、まさに原因が同じだったんですね。この資質を否定せず、むしろうまく使って周囲をハッピーにできるような生き方をすればいいんだと吹っ切れました。

個人の自己効力感を高めるために、企業や人事は何をすべきか

三浦氏そういう風に自分の資質とか強みに気付く後押しを、企業や人事ができると良いんでしょうね。楠さんの場合はご自身で苦しみながら行き着いたと思いますが、それができる人ばかりではないですから。

それこそストレングスファインダーのように客観的な診断があると、分かりやすいですね。

三浦氏そうですね。どういう状況に置かれると、どういう能力を発揮するのか。個人の能力の発動条件を客観的にデータで把握し、それをもとに機会を提供していく。一方で、本人が自分で気づいてアクションすることも大事なので、個人が自分に向き合って自分自身を知る努力も必要です。その両輪があると、結果としてレジリエンスが高まり、リスキリングしやすい状態に持っていけるのではないでしょうか。

自分を肯定する、自己効力感がレジリエンスを高めるには重要です。自分自身で「私は過去にこれを経験しているから大丈夫」だと思えることもそうですし、組織においてはパワーがある人がどれだけポジティブな言葉を使えるかがカギを握ります。そして、ポジティブな言葉の裏には「あなたはこれができるから大丈夫」「私たちはこういうことを乗り越えてきたから、これからも一緒に頑張ろう」という根拠が必要です。その根拠の一つとして、三浦さんがおっしゃった個人の能力の発動条件データを用いると、より説得力が出ますよね。

三浦氏組織自体がポジティブであることは大事ですよね。予測できない事態に直面した時に、新たなチャレンジが生まれ、変化できる企業とそうではない企業、どこが違うんだろうとよく考えますが、ポジティブな姿勢は失敗を許容する風土の醸成にもつながると思います。

失敗経験をオープンにすると、挑戦がしやすくなる

なるほど。新入社員研修を行っていて感じるのは、今の若い世代は失敗を極度に怖がるということです。SNSのキャンセルカルチャーのように、何か失言をすると拡散されて総攻撃を受けるのを見て育っているから、「とにかく自分を守らないと」という意識が強い傾向があります。その恐怖を意識的に緩和していく動きも、企業や人事に求められることかもしれませんね。

三浦氏ひとつの方法は、失敗経験をオープンにしていくことだと思います。スタートアップ領域で「ファーストペンギン」という言葉がありますよね。リスクのあることに最初に飛び込む人がいるから、後に続く人が出てくる。何かに挑戦したからこその失敗事例って、レジリエンスにおいても大事だと思います。失敗しても、リスキリングやアンラーニングを経て回復している人、きっとどの会社にもいるはずです。その事例を社内でナレッジとして蓄積して、「見える化」していくと良いんでしょうね。

三浦さんも、失敗事例を社内でオープンにしていたりしますか?

三浦氏たとえば、自身がチームマネジメントに関わる時や、経営企画としてインターナルで表彰事例を共有する時にも、心掛けるようにしていますね。もちろん、成功事例から学べることもあるんですけど、それよりも失敗事例を実体験から話したほうが、チームメンバーは耳を傾けてくれるし、アクションも起こりやすいんです。「失敗してもいいんだ」って、挑戦することへのハードルが下がるんだと思います。

ハードルを下げるという意味では、私も新人研修では「失敗」という言葉を辞書から消しましょうと話しています。「失敗」って「失って敗ける」と書くじゃないですか。それは怖すぎるから、代わりに「あちゃー体験」って言葉を使うんです(笑)。言葉を変えると捉え方も変わるから。そうしてリフレーミングすることで、失敗もオープンにしていくことができます。それが、レジリエンスにもつながっていくはずです。

リスキリングを促進するために有効な手段とは?

「レジリエンスを高めて、リスキリングにつなげる」という今回のテーマと照らし合わせても、変化や失敗を肯定的にとらえることは大切ですね。年齢を重ねると、その環境変化自体が起こりにくくなるから厄介だなと思います。色んな経験をして、自分ではレジリエンスが高いつもりでも、実は安全圏にいるだけで、どんどん周囲から取り残されていく。自分の手ではコントロールできない環境の変化に順応する経験が、リスキリングにおいても必要ですね。

三浦氏そうですね。外部の環境が激変したことによって自社を変化させたり、新しいスキルを身に付けたりしなければならない状況があるじゃないですか。たとえば、コロナ禍でDX(デジタルトランスフォーメーション)が一気に進んだ企業も多いと思います。これはコロナ禍が起因となり、テクノロジーを活用した進化だと思いますが、こうした外部環境の変化を企業の経営者はもちろん、働く社員一人ひとりが肯定的に捉えて変化を推進することが重要だと思います。

僕も実は、家族の事情で2022年の春に生活拠点を福岡に移したのですが、この生活をして初めて自分の時間の使い方を深く考えるようになりました。パフォーマンスを落とさないように、東京オフィスに行った時に経営陣や事業責任者、チームとどうコミュニケーションをとるのか。逆に福岡にいる時にどういう過ごし方をしたらいいのか。環境が変わったからこそ見えてくるもの、自分の成長の機会というのはありますね。

リスキリングにおいては、個人が変わらないといけないのはもちろん、企業から命じられることが多いですよね。その時に企業が気を付けなければならないことは色々あると思いますが、結構忘れがちなのが「今までありがとう」というねぎらいと感謝の言葉です。

一時期、女性の一般職を総合職に転換する動きがありました。しかし、企業は「ベテラン一般職の人たちがなかなか変わらない」という悩みを持っていらっしゃったんです。そこで話を聞いてみて分かったのが、彼女たちはこれまで企業の評価・昇進システムの外にずっと放置されていたんですよね。そこでいきなり変われと言われたら、「なんでいまさら」「これまでの自分を捨てろってこと?」って思うのは受け取る側の心理としては当然のことでしょう。だからこそ、まずはこれまでの実績に感謝した上で、リスキリングを促してほしいなと思います。

三浦氏感情面への配慮は大切なことですね。そういう意味でも、会社が背景や目的をしっかりと説明することがリスキリング促進につながると思います。野球初心者に、いきなりメジャーリーグを目指そうと言ってもピンとこないじゃないですか。まずは所属できるチームを探して、レギュラーメンバーになって、県大会に出場するには、というくらいまでに問題のサイズをブレークダウンして、そのための手順をつくっていくことがリスキリングにおいても重要だと思います。

自分の価値が発揮できる場に身を置く。だけど、結果がどうなっても否定しない

リスキリングで個人が持つべき意識を探るために、人事から経営企画に異動した時に、スキルのギャップがあったと思うんです。それはどういう風に気付いて埋めていったのですか?

三浦氏新しい部署に行った時に、意味が分からない議論とか意思決定の機会があるじゃないですか。そうすると、自分に何が足りないのか見えてくるんです。僕の場合は、上司や経営企画のメンバーの動きを日や週、月といったん観察しました。

そこで、僕が持ち合わせているスキルと、彼らのスキルにどういう違いがあって、何を習得し経験しないといけないのか浮彫りになっていきます。ただ、一つひとつのスキルを実践で磨いていくのか、新たにスクールに通って習得すべきかについては、自分の意思や会社から求められていることと調整しながら、その都度判断しなければならないですけどね。

迷った時に、自分がやりたいことや目標と、会社のビジョンとかパーパスと照らし合わせながら、誰かとすり合わせができるオープンな環境があるのはいいですよね。やりたいこと、できないことを開示するのってすごく勇気が必要ですから。そういう経験をしていれば、その後に環境が変わっても適応していけると思います。

三浦氏僕の場合は、常に自分の置き所を考えています。

「置き所」というのは?

三浦氏自分をどういう環境や、どういう人の近くに置くと価値が発揮でき、パフォーマンスが上がるのか、出来るだけ意識的に選択しています。特に今、僕にとってはチャレンジの時期なんです。当社も僕が入社した時は200人くらいの組織でしたが、現在は1,000人近く、1,000億円を超える規模にまで成長しました。これから3000億円やその先の規模を目指していく中では、組織の階層も部門の数も200人の頃とは違いますし、200人の頃は自分で自由に動いて意思決定できていたことも、1,000人の組織ではしづらくなります。新しい仕組みとか組織的な動きが必要になりますよね。でもこの状況って、自分のこれまでの強みや本来持つ素養とは異なります。

ではなぜ当社でチャレンジしているのかと言うと、その方が希少な人材になれるチャンスがあると思ったからです。自分の周囲を見渡すと、数十人から数百人規模、数十億から数百億規模までの企業を経験している友人や仕事仲間はたくさんいます。だけど、数十人規模から1,000人規模、そしてその先の規模への成長を乗り越えて会社が成長し続ける仕組みをつくり、個人がイキイキと働けるカルチャーを醸成できる人って本当に少ないんです。将来、経営を担う人材になりたいと思っているから、そういうフェーズも経験しておいた方がいいと思って、自分の身をここに置いています。

確かに、スタートアップが隆盛な今、100人規模までを経験して次のスタートアップに移るという人は増えてきていますよね。片や、大企業に所属している人もたくさんいる。でも、その間の成長フェーズとなると、そういう企業がまだ少ないというのもあって、人材としては希少性が高いですね。

三浦氏こんな風に話しておきながら、数年後はまた数十人規模のスタートアップで挑戦しているかもしれないですけど…。それも人生なので、その時は笑って受け止めてください(笑)。

そんな風に言える三浦さん、すごいなと思いました。自分に向いていないアゲインストな状況は、必ずしも成功しないかもしれない。でも、それをひっくるめて話ができるところに、レジリエンスの真髄を感じました。明日は明日の風が吹くといいますが、どうなっても失敗ではなくてチャレンジの結果でしかないですもんね。

三浦氏1年後に全然別のことをしていたとしても、そうなった自分を否定しないことですね。僕は日本史がすごく好きなのですが、偉人も大抵失敗しています。それに史実はひとつでも解釈はその都度だから、捉え方次第なんですよ。

そうですね。「あるべき姿」にとらわれすぎると、そうじゃない自分に出会った時に受け止めきれなくなりますからね。自分に向き合い自分を知って、さらに変化に合わせて成長する努力はすれども、その結果に固執しすぎない。そのスタンスこそ、レジリエンスを高めてリスキリングにつなげられるのだと思いました。

本日は三浦さんご自身の経験も交えながら、色々なお話を伺えてよかったです。ありがとうございました!